太陽の |
NO1
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「だめ」 トリュファイナは飛び込んだ。 誰もが動きを止めたように思えた。それは恐怖のためかと思ったがそうではない。 トリュファイナだけが動いていた。その止った世界の中で。 トリュファイナは思い出していた。戦う帝が決して逃れられぬと思われた死の剣を防いだとされる妖精后シャレムの早さを。 時の早さを越えて動く力。それが月の力の一つなのだ。 それには恐ろしいほどの力を消費しているのが分かる。エリクの体を逃すのが限界だった。 時の流れに追いつかれ、エリクの真顔がある。 「悪い。いつも決まらないな」 「そうだね。エリクはきっと一人ではダメなのよ」 エリクを見ていると力が出るような気がした。魔術師がいっていた言葉が思い出された。 「でも、私は強い。エリクも強い。二人なら勝てるよ」 「ジャックとブロッサムみたいにな」 トリュファイナは首を横に振った。 「違うの。私たちは生きるの。私は私の全力、エリクはエリクの全力で」 二人は仮面の魔術師に向かい合った。 「行くぞ魔術師」 「さらばです太陽の騎士」 魔弾が魔術師の背後に現れる。その数は数え切れぬほど膨れ上がった。 「もし本当に彼が魔術王なら、私たちは神に挑んでいるの」 「神か。でもな、俺は許せない。何もなければみんな生きていた。それを」 「大丈夫。私たちは強いの。だから彼はあれだけのものを用意した。さっき魔術師を倒した時よりもずっと多いんだよ。だからいこう」 魔弾が放たれた。大気を切り裂きながら迫る魔弾。その軌跡は極光の魔弾の名にふさわしく見る間に色彩を変えて美しく禍々しい。 光が去り、エリクは地面に転がっている。交わしきれなかったのは魔弾が何発もエリクの体を貫いている。
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