太陽の
騎士

月の
巫女

NO1
邂逅

その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
その8
その9
その10
その11
その12
その13

 

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「目を覚まされましたか」
  エリクは目を開けた。
  目を向ければ仮面の魔術師が焚き火を前に座っている。
「倒れていた時は心配しましたよ。あなたが剣をもっておられた事は安堵しましたが」
  エリクはそばに置いてある剣を見た。古ぼけた剣はどこにでもありそうなものだ。だが、その剣が決してそんなものではないのはよく分かる。闇払う陽の標、既に信仰が失われた神が持っていた神剣。
  エリクは闇払う陽の標を握った。闇払う陽の標は今までの剣よりずっと重く感じられた。むしろ細く薄いというのに。
「あなたは見れたようですね」
エリクは目を細めた。
「ああ。あれは何だ。ここは魔術がないんじゃなかったのかよ」
  見えた物を思い出しながらエリクはいった。
「剣の中に意思をもつものがあるのをご存じですか。支配されると城を買えるくらいの金を鞘につぎ込んだり、血を求めたりします。この剣もそういうものです」
「そうか」
「その剣は何を語りました」
「今までの持ち主の事さ」
  エリクは闇払う陽の標を優雅とも言えるしなやかさで振るった。それは今までのエリク自身もしらない動きだ。
「俺が弱ければのっとられるのを知っていただろう? そうなって死んだやつがいたのも見たぞ」
「そうはならないと思っていましたが。復讐は何よりも強い感情ですから」
  仮面の魔術師の声にエリクは息を吐いた。
「そうだな。じゃあ行こうぜ」
「体調は大丈夫なのですか」
「もう変わらないよ。あいつを倒してみんなを救うまでは」
「鎖の意味は分かりましたか?」
「さあ。でも手にはいったし、いいかって」
「そうですか。それはそれで構わないのですが。行った先で、ペガサスがいますので、それで街に向かってください」
  仮面の魔術師は立ち上がった。
「あんたは?」
「さらなる悪巧みがありまして。では、行きますよ」
  魔術師は呪文を唱えた。空気が変わった。南の風から、乾いた砂漠の風に。それは馴染み深いものだ。
  ペガサスが一頭、木陰に座っている。それは旅立った場所だった。
  ペガサスにエリクは近づいた。ペガサスの気性の荒さは知られている。価値がないものには触れる事も許さない。
「嫌かもしれないけどな、フェルティアを助けるためだ」
  エリクがいうとペガサスは小さく嘶いた。エリクはペガサスに乗った。
「行くぞ」
  ペガサスは宙を蹴り、空へと飛び上がった。
  朝の光の中を進むペガサスは砂漠を越え、街に入る。
  街の風景にエリクは目を細めた。街の中は人の姿はなく、静まり返っていた。それはまるで離宮の様子が町全体に広がったようだ。
「どうなってんだ」
  交わせたのは直感だった。エリクのいた場所を剣が音を立てて切り裂いて行った。
  エリクは身構えて目の前の男を見た。
  赤で統べられたその騎士をエリクはしっていた。
「ヤグナー・ナス」
「呼び捨てとはいい度胸だ小僧」
  前見たヤグナー・ナスと一見変わらない。だが、その背に浮かぶ陽光の中でのたうつものは今までなかったものだ。それは離宮の中で父を、仲間を見たときに感じたのと同じもの。
「お前も取り込まれたのか」
「私は選ばれたのだ。この世の王となるためにな。貴様も我が配下となれ」
「ふざけるな」
  エリクは闇払う陽の標を構えた。
「せっかくの誘いを断るとは」
  剣が振られた。前見たときよりずっと早い。だからこそエリクは正面から剣を受けた。力に圧倒され、体が後ずさる。
「この程度であったか」
「うるさい」
  エリクは戦叫を上げた。そのまま一気に闇払う陽の標を跳ね上げ、踏み込み、切りつける。ナスの鎧が音を立てて砕けた。それは膂力の問題ではない。それは闇払う陽の標の持つ力の現れだった。
  ナスもそれに気づき大きく下がった。
「逃がすか」
 
  トリュファイナは勝ち誇ったように身構えるエリクを安堵の目で見つめた。
  宙に投影されているのはエリクとナスの一騎打ちの様であった。
  離宮の広間にトリュファイナと魔術師はいた。
「神剣『闇払う陽の標』ですよ。あれを出して来るとは、誰か入れ知恵をしたようですね」
  その名前には聞き覚えがあった。むしろ禁忌とされる名ではなかったか。
「既に信仰を失い消滅した太陽神の神剣ですよ。いやその血縁ごと消されたと言った方がいいかもしれませんね。帝国によって」
  魔術師の言葉にトリュファイナは思い出した。王家の歴史の中で、幾度かあった反乱。その大きいものの一つは日輪を背に戦うものではなかったかと。
「かつて反乱し、あなたの先祖によって延命されたのが、その一族ですよ」
「エリクは」
「鎖にはその一族の子孫が含まれている。彼は間違いなくそうですね。ジャックは強い意思を持って屈服させた剣が、彼には進んで力を貸している」
「すごい」
  トリュファイナは呟いた。
「その通りです。もともと素養もありますが、恐らくは英雄と呼ばれる強さですが」
  エリクの一撃を受ける度にナスが力を失って行くのが見える。
「これではつまらないですね」
  魔術師の口から呪文が漏れた。その力はトリュファイナには分からない。だが、今まで魔術師が呪文を唱えるのを見たことがない。そう考えればこれは。
「彼にも十二分に力を発揮してもらわないと。これからの準備でもありますが」

 

 


 

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