太陽の |
NO1
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襲われているのが嘘のように離宮は静まり返っていた。 だからこそ、おかしいのがエリクには分かった。 少なくとも姫であるトリュファイナがいるのだ。前回は深夜だからこそ見つからなかったのも分かる。 だが、今はまだ夜も早い。だが、何者の姿もない。衛兵の姿も、召し使いの姿も。 襲われたというよりも、もぬけの空のように思える。 「もう誰もいないのかもしれないな」 エリクは足を速めた。 「でも、ここは確かに襲われたんだよ」 レジスはいった。立ち止まるとエリクはレジスを見た。 「どういうことだ」 「魔術戦だよ。一度、傭兵してた時に、受けた事がある。みんな寝ちゃってささ、どうしようもなく指揮官のところにいったらさ、寝てるのね。後から聞いたら魔王と呼ばれる凄腕の魔術師がいてね」 「よく生きているな?」 「余計な被害を出したくなくて、誘眠の魔術を外からかけたらしいんだよ」 「今回もそれだというのか」 レジスは頷いた。 「でも、あと戦士もいると思うけど。フェルティアさんの傷も剣だったしね。それもかなりの腕前だと思うよ」 「なら普通の戦いと一緒だ」 エリクは呟いた。 「どういうことさ」 「指揮官なり魔術師なり頭を潰す」 言い切るエリクにレジスは困ったような笑みを浮かべた。 「あのエリクさん。様子を見にくるだけじゃ」 「嘘だ」 「ええ」 レジスはため息をついた。 「ただ姫は助けるのが先だがな」 エリクは再び足を速めた。 「どこか目星はついているのか」 「いや、だが気付かれたみたいだ」 襲い掛かってきたのは戦士だった。剣が唸りをあげて叩きつけられる。 「邪魔するな」 叩きつけられた剣を抜きざま力づくで弾き返す。そのまま踏み込み叩き込むと戦士は壁に叩きつけられた。意識を失っているのか微動だにしない。 「レジス、足を止めるなよ」 とエリクがいった時、既にレジスの体は次の角を曲がっていた。 「待てレジス」 エリクの背後で。震えが来た。戦士の姿が黒くなったと思うと、塵に変わり、次の瞬間には大きな影を形作る。 黒い皮の翼。爬虫類めいた顔。蠍を思わす尾。前足のないドラゴンめいた姿。それはワイバーンだった。 「何だ」 ワイバーンはエリクに襲いかかった。 「エリク」 エリクの体はワイバーンの足に捕まれ、そのまま壁に叩きつけられた。 「なめるな」 エリクは立ち上がる戦叫をあげた。飛び込んできたワイバーンはエリクに襲い掛かる。 ワイバーンの身体が横から吹っ飛ばされた。その衝撃の威力は、エリクもよく知っている。ひるんでいるワイバーンに向かい、エリクの体が爆ぜた。突き出された刃がワイバーンの体を貫通する。 ワイバーンの体が塵となり、細かな粒となり消え去った。 「こんなのがいるなんてここおかしいって」 レジスがふらふらしながら姿を見せた。 「効くなレジス今の」 「昼間使った奴だよ」 レジスの手の中で筒はひびが入っている。 「力の加減間違えたみたいだけど。高かったんだけどな」 声が聞こえた。 「実に興味深い。ankの血統とは」 廊下にいたはずの二人は広間にいた。 そこに立つのは魔術師だった。その脇の玉座にはトリュファイナの姿があった。だが、トリュファイナは今が分からないように玉座に座ったまま笑みを浮かべている。 「誰だお前は」 「おやおや。あの天馬の騎士は、どこに助けを求めたのかね。せめて魔術ギルドのものは連れてくると思ったのですが」 エリクは切りかかった。
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