太陽の
騎士

月の
巫女

NO1
邂逅

その1
その2
その3
その4

 

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  屠られる直前の肉塊のようになっていたエリクの身体が動いた。
「何しやがる」
  エリクは叫んだ。
  意識が絶えていたのに立ち上がった瞬間に闘志をむき出しにするのは戦士としては優秀だろうが今は困る。
  レジスは人事のように思いながらフェルティアをかばって前に出た。
「退けレジス」
「まあ。落ち着けって。こちらのフェルティアさんも協力してくれるってさ」
「協力?」
  エリクが疑わしそうにフェルティアを見た。フェルティアも同じくらい不快気に眉をひそめている。
「そっちは不服そうだな」
  エリクがつぶやいた。
「何でそう戦うとするのさ。落ち着けって。特にエリクはさ、絶対フェルティアさんに協力してもらった方が話し早く進むんだから」
  レジスの言葉に、エリクは引きつった笑顔を見せ合った。
「俺はエリクだ。よろしくフェルティア嬢」
  その恐ろしくあっさりとした切り替えしにフェルティアは笑みを浮かべた。
「ああ分かったエリク殿。それでは話を聞こうか。協力するにしてもそれからだ」
「そうだな。ここだと人も通るし中入るか」
  『鎖』の詰め所の一角にある食堂に三人は入った。

 百人あまり入れる食堂は、フェルティアもよく知る機能本位に作られた兵士のための空間だ。戦即日常といった考え方からか、食堂というのに壁にはハルバードやモールといった長柄の武器。エリクが持っているのと同じような刃の太い剣が置かれている。
  エリクは家だから レジス一人が落ち着かない、卓の一つに三人は腰を掛けていた。
「訓練を終える前だったから夜になるちょっと前だったと思う。急に伝令来たと思うと、ルベスさまが襲われたから向かえっていうんだよ。それっきり二日になるのに戻ってこないしさ」
「命令がどこから出たものというのが分からない上に、帰還してこないというのだな」
「ああ、そうだ」
  フェルティアが見たところ食堂は百人は入れる。ということは少なくともそれに近い数の兵が行方不明ということだろう。それは異様な事だ。
  元来、軍籍にあるものを動かすのは命令だ。その命令の背後にあるものは政治であり、その更に奥には金というものがある。帝国の治世が長く続いた今、軍事とは非常に難しいものになっている。そう金を捻出しがたい事になったいる。
「どうして離宮からの命令だと」
「この街でそんなことを言ってくるのはあそこだけだからな」
「それでか。随分と短慮な事だ」
「短慮だと。ああされて普通にしている方がおかしいんだよ」
「落ち着きなよエリク。フェルティアさんはさ、どう思う。俺も俺なりに考えたんだけどよくわからなくてさ」
  レジスの落ち着いた声はありがたい。聞いていると肩肘を張らないでいい感じだ。
「そうだな。離宮ではなく、本部にいくな。お前が思っているより、軍事というのは金がかかるものだ」
「金か」
  レジスとエリク。共につぶやいたが、響きは随分と違っていた。
「そうだ。騎兵になれば人だけでなく馬やそれ以外に同行するものたちの食料や水が必要だ」
「なるほど」
  エリクは初めてそういうことを考えたようで仕切りに頷いている。
「でも俺達だとそんなの調べられないからね」
  レジスは残念そうにいった。
「そうだな」
  フェルティアはレジスを睨んだ。
「何を見ている」
「え。いやさ俺達じゃ無理だからさ。調べてきてくれないかなって」
「何だと?」
「頼む」
  エリクもさっさと頭を下げている。
「頼むよフェルティアさん」
  フェルティアはこまった。

 日は暮れていた。
  フェルティアを送り出した後も、そのまま食堂にいた。
「いい人でよかったじゃん」
  エリクはレジスの言葉に素直に頷くことはできなかった。
  フェルティアは城に引き上げていった。腹の中では分からないが、とりあえず約束はしてくれた。
  だが、エリクは簡単には納得できない。
初めて顔を会わした時に切りつけられたらのを根にもっているのだ。初めてだけでなくいったい何度切りつけられたか。
  どこかの貴族の姫らしいが、トリュファイナとは随分違うものだ。
「ははーん。さてはあのお姫さまの事考えてるな」
「どうしてそうなるんだ」
  図星だったせいでどうもきつい返しになる。
「わざわざ離宮にまで忍び込んだんだ。それなりにあるのかと思ってさ」
「レジス」
「何?」
「お前の考えはしらないが、俺はみんなの行方を知りたいんだ。それまでは関係ない」
  正論に逃げたエリクにレジスは笑った。
「分かった。それまでって事だね」
「あのな」
  駆け込んできたのはフェルティアだった。
「早か・・・」
  そう気安くいいかけたエリクの目が細まった。フェルティアの動きがおかしい。
「敵襲だ。離宮が」
  フェルティアが倒れるのをレジスが支えた。
  二の腕から血が滲み出ている。上から見るとそれだけだが外に傷があるように思えた。
  フェルティアを寝かしたレジスは荷物から包帯と薬を出すと慣れた様子で手当を始める。
  フェルティアの剥き出しになった白い肌にエリクは外に出た。
  砂漠の方から夜気交じりの冷たい風が吹いてくる。その風の方に離宮の屋根が見える。
  フェルティアの言葉とは裏腹に離宮は静まり返って見える。
  トリュファイナの事を考えると。初めてあった時のように人をかばってむちゃをしそうな気がした。
  エリクは耐え切れなくなり走りだそうとした。
「一人で行くのか?」
  振り返ればレジスが立っている。
「様子を見てくるだけだ。バカなまねはしない」
「俺も行く」
「フェルティアは」
「書き置きしといた。手当ても終わっている。できることはないよ」
「分かった。いこうぜ」


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