太陽の
騎士

月の
巫女

NO1
邂逅

その1
その2
その3

 

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「行くぞ」
  踏み込みながら膂力で一気に叩き込む。少年は交わした。そのまま少年に攻めを許さないように間断なく剣を振る。相手が攻勢に転じれば負けるのは自分のように思えた。
  だが、その心配はないようだった。少年の剣には精彩がない。離宮での動きが嘘のようだ。今ひとつこちらの動きに集中していないように思えた。
  大振りの一撃を放つ。それはレイピアのしなやかな動きにそらされた。そのまま剣から手を離す。少年の動きが一瞬止まった。エリクは頭から突っ込み少年を押し倒した。そうすれば重さが物をいう。エリクは拳を振り上げた。
「そこまでエリク」
  レジスが叫んだ。
「あ?」
「女の子にそれ以上はダメだって」
「女?」
  エリクは慌てて離れた。
  レジスに言われてみれば確かにそこにいるのは少女だった。背はレジスとそれほど変わらないが、それはレジスが小柄なせいで、長身の少女ならこのくらいの背にはなるだろう。
  細いその身体が震えている。淡い藍色の瞳が光を強くしている。そんな光の時が危険なのをエリクはしっていた。
「女だからどうした? 私は誰よりも強くあるように育てられた」
  少女はレイピアを構えた。鋭く攻めかかるのは今までと違う。宮廷での儀礼的なレイピアの使い方、相手を傷つけずに負けを認めさせるものから、より致命的な急所狙いになっている。
  上着を脱いでいるせいで血管の薄い所がよく見えていることだろう。
「剣を拾え。侮辱の代価を教えてやる」
「教えてもらおうか」
  天に突き上げるように剣を両手で振り上げる構えは隙だらけだ。だからこそ定法に徹した少女は動きを止めた。
「こないならこっちからいくぞ」
  エリクの剣は重い。もともと『鎖』の武器は見てくれよりは威力を優先したものだ。長柄のハルバードや、モール。そうしたものも用いる事も多い。剣もそれに順じていて、天才の閃きよりは、訓練をした分確実さを高める戦い方を仕込んでいる。刃の太い剣は筋力さえ上がればより自由に操れるようになるものだ。それは掠っただけで傷を残していく。まして鎧をつけていない軽装なら確実に致命となる。
「やめろってエリク」
  レジスが何かいっているが意識から切り離す。そうしなければ勝てないとエリクは踏んだ。
  剣技のみで言えば目の前の少女の方がはっきり上だ。勝てるとすれば今感情的になっている今しかない。冷静さがもどれば彼女の方が上だ。
  エリクは戦叫をあげた。爆発するような動きは少女に肉薄する。
  声のせいで一瞬少女のレイピアは精度を失った。弛みでそらし切れずレイピアが折れる。
「ごめん」
  遠くでレジスの声がした。
  エリクは横から急に何かに殴り飛ばされた。体勢を整えようと思った瞬間、突っ込んでいった先は、そう壁だった。

「さすが魔術ギルドの新作」
  エリクの体は壁に勢いよく叩きつけられそのまま動かない。不意打ちだったためにまともに受身がとれなかったのだろう。
  レジスは手にした筒を見つめた。外見にルーンめいた装飾が施されたそれは、最近魔術ギルトから手にいれた空気筒だ。ただ圧縮した空気を敵にたたきつけるだけの道具なのだが、魔力量に比例するため人によっては結構な威力になる。
  ときいてはいたが、まさか一撃で戦士を気絶させるほどとは思わなかった。
「私を馬鹿にするのか」
  少女はレジスに向かって近づいてくる。間違えなく怒っているその様を見ていて正直逃げたいところだったが、
「馬鹿にしてないよ。ただ、俺は女の子が怪我するの見たくないだけなんだ。それにこいつだって友達なんだ。君だって友達が怪我するの嫌だろ」
  レジスは立ち止まった。
「それはそうだ」
「ならいいじゃん。まあ、終わってみればどっちの怪我が大きいか分からないけどさ」
  レジスは気絶しているエリクの体を起こした。
「見逃してくれない?」
  少女の怒りが引き始めたのが分かった。怒りが熱となって放出されていたのが冷えてきている。
  勝手に押しかけた上に、助けられ、なおかつ下手に出られれば、人間なかなか攻められないものだ。
「分かった」
  それでも少女は立ち去る様子を見せずにレジスがエリクを手当てするのを見ている。
「どうしたの?」
  少女は少しばかり躊躇している。言葉を選んでいるのか、少しづついった。
「何か手助けできそうなのでな。起きるまで待っていようと思った」
「君いい奴だな」
「その君と呼ぶのは止めてくれ。何か照れくさい。フェルティアでいい」
  レジスは頷いた。
「俺はレジス。こいつはエリク」
「レジスにエリクだな。分かった」
  フェルティアは頷くとレイピアを拾い上げた。
「ここは騎士団の詰め所のようだが、どうして誰もいない?」
「『鎖』騎士団だよ。何か急な出動があったんだって。それがおかしいと思って今回の騒ぎになったんだ。エリクが知り合いがいるから聞きにいくって言うからさ」
「そうか」
  レジスの言葉にフェルティアは苦笑した。

 



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