太陽の |
NO1
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「行くぞ」 踏み込みながら膂力で一気に叩き込む。少年は交わした。そのまま少年に攻めを許さないように間断なく剣を振る。相手が攻勢に転じれば負けるのは自分のように思えた。 だが、その心配はないようだった。少年の剣には精彩がない。離宮での動きが嘘のようだ。今ひとつこちらの動きに集中していないように思えた。 大振りの一撃を放つ。それはレイピアのしなやかな動きにそらされた。そのまま剣から手を離す。少年の動きが一瞬止まった。エリクは頭から突っ込み少年を押し倒した。そうすれば重さが物をいう。エリクは拳を振り上げた。 「そこまでエリク」 レジスが叫んだ。 「あ?」 「女の子にそれ以上はダメだって」 「女?」 エリクは慌てて離れた。 レジスに言われてみれば確かにそこにいるのは少女だった。背はレジスとそれほど変わらないが、それはレジスが小柄なせいで、長身の少女ならこのくらいの背にはなるだろう。 細いその身体が震えている。淡い藍色の瞳が光を強くしている。そんな光の時が危険なのをエリクはしっていた。 「女だからどうした? 私は誰よりも強くあるように育てられた」 少女はレイピアを構えた。鋭く攻めかかるのは今までと違う。宮廷での儀礼的なレイピアの使い方、相手を傷つけずに負けを認めさせるものから、より致命的な急所狙いになっている。 上着を脱いでいるせいで血管の薄い所がよく見えていることだろう。 「剣を拾え。侮辱の代価を教えてやる」 「教えてもらおうか」 天に突き上げるように剣を両手で振り上げる構えは隙だらけだ。だからこそ定法に徹した少女は動きを止めた。 「こないならこっちからいくぞ」 エリクの剣は重い。もともと『鎖』の武器は見てくれよりは威力を優先したものだ。長柄のハルバードや、モール。そうしたものも用いる事も多い。剣もそれに順じていて、天才の閃きよりは、訓練をした分確実さを高める戦い方を仕込んでいる。刃の太い剣は筋力さえ上がればより自由に操れるようになるものだ。それは掠っただけで傷を残していく。まして鎧をつけていない軽装なら確実に致命となる。 「やめろってエリク」 レジスが何かいっているが意識から切り離す。そうしなければ勝てないとエリクは踏んだ。 剣技のみで言えば目の前の少女の方がはっきり上だ。勝てるとすれば今感情的になっている今しかない。冷静さがもどれば彼女の方が上だ。 エリクは戦叫をあげた。爆発するような動きは少女に肉薄する。 声のせいで一瞬少女のレイピアは精度を失った。弛みでそらし切れずレイピアが折れる。 「ごめん」 遠くでレジスの声がした。 エリクは横から急に何かに殴り飛ばされた。体勢を整えようと思った瞬間、突っ込んでいった先は、そう壁だった。 「さすが魔術ギルドの新作」
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