太陽の
騎士

月の
巫女

NO1
邂逅

その1
その2
その3
その4
その5
その6
その7
その8
その9
その10
その11
その12
その13
その14
その15
その16

 

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 魔術師は真横に切り裂かれた腹から、血を零し続けた。不死の呪詛が無効になったようにまったく体の再生が効かない。
「まさか」
  それは考えられない事。他の魔術師の反応はなかった。天馬の騎士の魔力や、ANKの少年にも十分注意を払っていた。魔力を発するものは後は。
  魔術師の目がペガサスに止る。
「そこですか」
  魔術師の前に紋章が浮かび上がった。ペガサスに向かい光がたたきつけられる。ペガサスの姿が壊れ、そこに現れたのは仮面の魔術師の姿だ。
「ばれてしまいましたね。もともと魔術を帯びたペガサスになって隠れるのはなかなかいい手だったでしょ」
「ディラハム」
  魔術師の声に答えるように、仮面の魔術師は頷いた。
「君の指示かディラハムよ。さしずめ偽魔術王とでもの名乗ったのかね?」
「ええそんなところです。では、黒き日輪はもらっておきましょう」
「そううまくは」
  現れたのは数多の怪物たちだった。ワイバーンやキメラ、ヒュドラといったそれらは倒せば英雄と呼ばれる怪物だ。
  それは雲霞の如く群れ、仮面の魔術師に襲いかかった。 
  無数の魔弾が魔術師の背後に現れていた。それは一つ一つが害意を持って、仮面の魔術師の命を待っている。
「行け」
  無数の魔弾は怪物を貫いた。貫いた魔力が一気に炸裂し、怪物を消滅させる。
「こんな」
「魔術師、どうして自分が蘇れたか考えましたか」
  魔術師は哄笑した。
「全てはそうか」
「いい触媒でした」
  数多の魔弾が魔術師を砕いた。

「ありがとう。助かりましたよ」
  仮面の魔術師はいった。
「全部お前の企みか」
「ええ。帝国の月の力を打ち破れるものを作り出せるか、試していまして。これもその一つです」
  エリクは切りかかった。だが、仮面の魔術師を捉えることはなかった。緩やかに魔術師を包む力が刃先を鈍らす。
「いくら最適な人材でもあなたにこの剣は扱いきれませんよ。神剣や魔剣というのは、魔力であり、魔術だ。剣でありながら、その性質は違う」
  エリクの体が大きく弾き飛ばされた。
「魔術師が遺した力を見るといいでしょう」
  黒き日輪が光を増した。降り落ちる黒き太陽は先程より小さいがエリクめがけて落ちて行く。巨大なそれがエリクに覆いかぶさる。
「死ぬか」
  エリクは仮面の魔術師に飛び込んだ。
「さよなら」
  仮面の魔術師はいった。
「だめ」
  トリュファイナは叫んだ。
  エリクの体は投げ出されていた。トリュファイナの顔が目の前にある。
「悪い。いつも決まらないな」
  離宮でのことが思い出された。あの時もかっこよく飛び出し父にぼこられたのだ。
「そうだね。エリクはきっと一人ではダメなのよ


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