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決意の戦場

その1
その2
その3
その4
その5
間奏

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決意の戦場

 砂が激しく巻き上がった。
  白い神官服の聖女と、黒い装束の魔女の戦いが続いていた。
  お互いに元来の手段である神力と、魔術を使わないその戦いは、呪文保持者の戦いではなく、ただの殺し合いのようだ。
  鋭利な短剣と、重いロッド。お互いに致命傷を与えるのは難しい武器だ。短剣はその一撃の威力が少なく急所を狙うしかなく、ロッドは当たれば大きいがなかなかに当たる事はない。
  しかし、魔女は巧妙だった。戦いながら爆裂の紅玉、呪文を宝石化したものを確実に配置していく。それは魔術師の戦い方ではなく、狡すからい魔女の手口だ。
  聖女は気付かない。彼女は自身では分かってはいないが冷静さを失っていた。いつもならこうした事には気付いているはずなのだ。聖女もまた聖女とは言えない狡猾さを持っているはずなのだから。


「ああもう危ないってば」
  少女は翼を広げるとただ場面を映し出す水鏡に飛び込んだ。
  が、水鏡は恐ろしい弾力を持って少女の体を弾き飛ばした。
「ああ、もう」
  それでもあきらめずに静かに水鏡に触れると確かに手は入る。
「よし」
  少しづつ入るが結局は押し返された。
  少女はいらだたしく水面を踏んだ。激しい水しぶきがあがり、景色が歪む。
「ああ」
  炎が水面を覆っている。恐らく大量の炎の魔術が使われていることだろう。
「まずいまずいよ」
「落ち着いたらどうだね」
  のんきな声が聞こえ、振り返れば、女の仮面をつけた男が立っている。
「ああ、もういらいらする。どうしていっちゃだめなの。あたし神様なんでしょ。神様は好き勝手にできるんじゃないの?」
「そうすればあの司法神、ウェスナードが勇んでくることになるだろうね。我々は信徒や御子を通してしか地上に顕現はしない決まりだ。生粋の我々の力は人間によっては触れるだけで蝕まれる」
「あそこにいる連中は大丈夫だって。そんなにやわな連中に見える?」
「あそこにいけばそれこそ問題だ。あの少女は、ダルタロック神のレブナンだろ」
「レブナンだってあんなの・・・まあかわいいけども敵じゃないよ」
「いけば、本体がでてくる。死は安らぎを与えるのに必要な慈悲だが、制限ない死の開放は恐ろしいものなのは君でも想像はつくだろ」
「そうだけど、もう」
  聖女はどうにか立っていた。しかし、それは黒騎士の力によるものだ。彼はもう動けないほどに消耗している。
「ああ」
  ここで狂熱の躯でもしておけば、もう黒騎士は終りだ。
  少女は手を叩いた。
「あなたはどうなのよ?。魔術王っていったら地上を闊歩しているっていうじゃない」
「ああ、仮面の下の顔を見たものはいないだろ。あれが私であるかなど誰も確かめる事はできない」
「そんなのおかしくない」
「仮面がとられる瞬間まで、私は誰か不確定なのだよ」
「便利ね。じゃあ、ちょっといって軽く手を出してきてよ」
「だからこそこの仮面があるわけだが。それよりも助けがきたようだ」
  魔女は撤退していた。聖女は騎士らしい少女の胸にすがってないている。
  少女は安堵の息を吐いた。
「二人ともまだゆとりがあるね」
「どういうこと?」
「聖女の方は治癒力を停止させる『死出の掌』を使えばいいし、魔女の方は人に任せた。お互いにまだ決まっていないんだろう」
「そうなのかな」
  少女は呟いた。いつもの調子で何かポカをしたんじゃないかと思えた


もしよかったら

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