NO3
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バネット・ガドフリーは目を細めた。その視線の先には、飛翔の呪文で降りてくるアル・ナスライン、フェイト・クローナの姿があった。 手に見える塊は、バーソロミュー卿、ランドウル公、そして自分が何よりも望んでいる、祖の樹の欠片であろう。 二人を選んだ人間は間違いはなかったのだ。ただ、二人の性質を理解していなかっただけで。冒険者上がりである二人を金でどうにかできると思っていたのが間違いなのだろう。 こちらの事を二人も認識したようだ。 「こんなところまで追いかけてらしたんですね」 アルは柔らかな笑みを浮かべながらいった。 「はい。バーソロミュー卿に命じられまして、お二人をお迎えに上がりました。バネット・ガドフリーともうします」 「力づくでは無理ですよ。私も少しばかりでしたら、抵抗いたします。クローナ師も、その名前を聞かれれば、戦うことの無駄は分かっていると思います」 フェイトはまっすぐに顔を向けこちたを見ている。フェイト・クローナは魔王と呼ばれる魔術師だ。その気になればすぐさま呪文を放ってくるだろう。 アルは黄金の目をしている。神の視界といわれる聖女アル・ナスラインの力だ。それはどのようなものかは噂でしかないが、恐らくここでは伏兵も、同行してきたものも全て見えていることだろう。加えてこの地は不思議とアンデットを呼び出すのを妨げる何かがあった。 ここでの不利は明らかだった。 「分かりました。ただ、ドラゴンの子は逃してしまいましたがそれは構いませんか」 この状況でなら、何をいっても通ると分かっている口ぶりだった。しかし、ガドフリーからすれば頷くことしかできない。 「はい。問題はありません」 「ありがとうございます」 そういうとアルは笑みを深くした。 「聖女殿」 フェイトは指差した。そちらを見ればドラゴンの子がこちらを見ている。ドラゴンの子はアルの前に降り立つと、何かをしきりに訴えるように声を上げている。 ガドフリーは周囲を警戒した。もしドラゴンがその気になれば、この場の三人など一瞬で消え去るのが分かっている。 だが、いたって雰囲気はのどかだ。 「彼は感謝を表しています」 「気にすることはないです。好きでしたことですから」 そういう 「でもいつかお礼をするといってますよ」 「ではいずれな」 ドラゴンの子は名残惜しそうにアルに巻きついた。 |
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