NO3
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それは壁であった。 ドラゴンに案内されて歩いているうちに森は途切れ、洞窟が姿を見せた。 その洞窟に入って五分ほど行き止まりだった。 「おい、どうしたんだ」 というアルの声を背に受けながら、ドラゴンの子は岩を通り抜けていった。 速くこいというように向こう側で呼ぶ声がある。 「今行くぞ」 だが、アルが岩に手を触れると、青白い火花が散った。 「危ない」 フェイトのケープが異様に大きく広がり火花を受け流した。 「思ったよりやるなフェイト氏は」 「ケープがいいものなので。まあ、ドラゴンとの通訳だけしてたらさすがにみっともないですし」 「確かにな。しかし強固な封印だな」 アルは中に向かい怒鳴った。 「本当にここでいいんだな」 ドラゴンは声が響く。 「そうだといってますね」 アルの神官服は少なくない呪紋処置が施されている。低いレベルの魔法ならあっさり弾くはずなのだが、それをあっさり貫通した。フェイトがそらしたため、変わった力の流れで背後の壁が折れかかっている。 「解呪しましょうか」 「できるのか?」 「これでも専門家ですからね」 フェイトはそういうと微かに呪文を呟きながら封印に手を触れた。封印は発動しなかった。 ただ、あくまで発動を止めただけ。解除には遠いようだ。 「随分古い呪文ですね」 「分かるか?」 「ええ、割合得意なんですよこういうのは」 アルはフェイトを見ている。見ていると、かなりの早さで封印を構成する呪紋が解除され、書き換えられていくのが分かる。 「これほどの人間がどうしてここにいるのか」 それはただ魔法というのではなく、職人が無言で自らの作品と対面しているような風情がある。 「あなたがいたからですよ。少なくともこの件に関してはですが」 アルは首をかしげた。 「どうしてわしに興味を持った?」 「もしかして仲間かと思って」 「仲間か? それはそうだろ。こうして一緒に冒険して頼ってるのだ。今は仲間に決まっている」 フェイトはなんともいえない笑みを浮かべた。 岩にルーン文字が光を放ちながら浮かび上がる。それは一瞬にして形を変え、違う呪紋となる。 壁が砕けた。 「解けましたよ封印。まあ、壊れてしまいましたが」 「ありがとう」 アルは先に立って、人の大きさ程度の穴を調べ始めた。 「適材適所。罠調べとか、こうした芸当はわしの方が上だからな。あとは任せてくれ」 「本当に聖女にはもったいないですね」 「いや、仲間がいるときはしないのだぞ」 「ああ、レジスくんですね」 「彼は商人なのだがな」 フェイトの目が疑わしそうに細められる。 「ああ、その顔は信用してないな」 「いえ。いきましょうか」 「ああ、おいおい」 ドラゴンの子が声を上げている。出て直ぐに見えたのは森だった。 「ここなのだな」 |
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