NO3
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「アル、ねえ変だよ。冒険にいくんでしょ」 シアの言葉にアルは頷いた。 「そうだな」 丘を越えて、その後は街道に出る。そのまま一日あまり進めば最近発見された沿海部の遺跡に出る。 そこで何日か調べればちょっとした稼ぎにはなるはずだった。もっともアルは既に聖女として義務を果たしおり、それほど冒険者というものに固執しているわけではない。シアの学費稼ぎが主な理由だ。 だから学園が休みの日は冒険に出る。二人か、戦士のロディが一緒だが今日は都合がつかないようだ。 「何にやついてるのアル」 「たまには二人でもいいなと思ってな」 「ほうほう。そんなにあたしのこと好きなんだ」 「いや、ロディ氏がいると妙に女の子らしくなるので怖く・・・」 「この口かなアル」 頬をつねられた。戦士の父親を持っていたせいか、シアの力はかなり強い。最初は笑っていたがいつまでも終わらず、 「いくらなんでも痛いぞ」 つい抵抗した。シアなら軽く交わせるくらいの強さで殴りつけた。 そこは森だった。 目の前にはいい感じに拳を顎にくらって倒れているフェイトの姿があった。。 「ドライアドか」 ドライアド、木霊は人を騙す。美しい女性の姿で、また時には思い出の中に埋没させ、人をそのまま死に至らしめることもあるという。 さっと世界は元のままでさっきまで感じたシアの感触はどこにもない。ドラゴンが心配げに鳴いた。 「ああ。すまんな。ちょっと夢を見てしまった。ああ、それよりだいじょうぶかフェイト氏。反射的に殴ってしまった」 「いや。体重の割りにいい拳ですね」 「すまんな」 アルは頭を下げた。そうすれば目が濡れているのが分かる。顔を下に向けたまま手で涙を拭う。 「治すか?」 「今回は大丈夫です。ただ、今度は夢に見て欲しいですね」 アルは邪笑を浮かべた。 「分かった。そうすることにしよう」 「ちょっとどんな夢を見る気ですか?」 「秘密だ」 フェイトは肩をすくめると不意に真顔に変わった。 「あなたほどの人間がどうしてあの程度の幻術に引っかかるんですか」 「はは。それはきっと心のどこかで今を否定したがっているからだろうな」 冗談めかしていうアルにフェイトは首を横に振った。 「それは避けた方がいい。あなたが今の人にとらわれているなら。いつかはそこに足元をすくわれますよ」 「それよりそろそろフミヨの連中が追いついてくるのではないかな」 フェイトは頷いた。 「しかしどうしてあれだけ追ってくるのかわからんな」 「本当に分からないまましているんですか? てっきり聞いてこないのでこのドラゴンの本当の価値を分かっていると思っていたんですが」 「わしはとりあえずこれを戻りたい場所に連れて行きたいだけだ」 アルがそういうとドラゴンが首に巻きついてくる。 「知っている事を聞いていただけますか?」 「ああ。構わないぞ」 フェイトはその場に座った。 「どうぞ」 長い話になるという意味なのだろう。アルも座り込んだ。 |
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