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「アル」 落ちていくアルを見ながらフェイトは叫んだ。 フェイトはドラゴンから飛び降りた。全力で下に向かって飛ぶ。炎に包まれたアルを掴めると思った瞬間、業火がフェイトを襲った。 アルの身体が地面に転がっているのが見えた。全く動かないその様。近づきたい。だが、そうしたら後ろからの先程の業火に狙われるのが目に見えていた。 冷静になれフェイト・クローナ。彼女はレテに愛されている。誰よりも。だから大丈夫だ。 ドラゴンがフェイトの横で滞空している。 「アルと小さい仲間を見てやってくれ」 「大丈夫かフェイト。それは尋常なものではないぞ」 「問題ない」 ドラゴンはそのまま下に向かい降りていく。フェイトは業火の主を見た。 「何者ですか」 黒いローブが見えた。竜の頭をしたロッド。顔は隠れているが魔術師であるのは分かった。 フェイトがしているのと同じように意識をすることなく飛行魔術を使えるのだからそれなりのものだろう。いや、そんなことは最初の攻撃で分かっている。 「素直に死なせてあげなさい。意識が飛ばない限り、死にたくても死ねないのだから」 「彼女は死にたくなんかない」 「どうかしら。人は誰でも死を夢見て生きていく事ができるのよ。安らぎを求めてね」 「それはどうですかね」 「あなたも安らぎの無い人間だったわね。その体はただの偽者に過ぎないのだから」 フェイトは手を振った。稲光が走り、魔術師の体を貫く。 先程の呪文は、空間転移で、呪文を封印した宝石を送り込んできた。それは空間制御と、呪文の封印。共に上位位階の魔術だ。それだけの相手ならある程度は防がれるはずだった。 「さすが魔王。いい呪文だわ。詠唱なしの電撃。師匠である霹靂の魔王の専用呪文ね」 まったく効いている様子が無い。その魔術師は全く防御に魔力を割いていないのにそれは異様だった。幻かあるいは人形。 「幻でも人形でもないわ。精霊魔術は私には効かないから。そのつもりでどうぞ」 その事を聞いてフェイトは思い出した。人の手に余るが故に、禁術といわれる一つを。それは肉体に四大精霊を封印し、それにより精霊系の呪文一切を無効にする技だ。ただ、精霊は精神の働きにも関係している。そのため発狂を免れた魔術師はいない。 「四霊顕現か」 魔術師が頷いた。 「さすが禁術にも詳しいのね。乗り換える気になったのかしら」 フェイトは黙った。懐から取り出したのは木片だった。 「これを渡すから見逃してくれないか?」 フェイトは木片を差し出した。 「本気?」 「ただし渡すのはアルさんから離れてからだ」 「あれは放っておくの」 「信じる事にしますよ」 フェイトは真顔でいった。魔術師の口元から笑いが漏れた。 「信頼で購おうというの。魔術師の癖に」 「精霊魔術を使う君なら分かっているだろ。いや、魔術だけではないけどね。約束は魔術の礎だ」 「分かったわ。私も手を出さない。ただし、時間を限定してね」 「ええ。一時で構いませんよ。では、離れます。もっともお互いに空間転移ができるから無駄ですがね距離は」 フェイトは高速で飛び始めた。魔術師もそれに続いた。 |
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