NO1
砂の城
その1
その2
その3
その4
その5

 

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5
 風切る音が響いた。
  いななきが聞こえたと思うとアルに襲い掛かろうとした少女の、いや怪物の身体は地面にめり込んでいた。
  空中からの一撃は一頭のペガサスの蹄であった。空中からの加速。そしてペガサスの重量が加わり蹄は凶器だった。怪物の動きは止まっていまい。ペガサスに乗る騎士の手が少女に向けられている。小さくルーンが唱えられた。握った手には魔力が光を放ちながら渦を巻いている。
  魔力の砲弾。そういっていい圧力と力を秘めた閃光が怪物を叩き潰した。
  騎士の鎧には西大陸を取り仕切るアムドゥシアス帝国の紋章が描かれている。そしてその顔は。 
「探しました」
  降り立ったのは一人の長身の少女だった。少女といっても体つきは十分成長し、大人の女性の美しさを持っていた。だが、その顔にはまだ幼さが少しばかり残っている。淡い藍色の瞳は冷たさを持ってレジスを見つめている。
「フェルティア」
  レジスは声を上げた。
  その少女はフェルティア・アルフィスタ・ラディルはレジスがここにいる原因のようなものだ。彼女が約束をすっぽかした結果アルの仕事を請ける事になったのだから。
  レジスは約束を破った事に気をかけてこんなところまで探しに来てくれたフェルティアの事が嬉しかった。
  フェルティアはペガサスから降りると歩き出した。
「ありがとうフェルティア」
  そういうレジスの横を通り抜け、フェルティアはアルの前に立った。
「探しました聖女さま」
  フェルティアは恭しく頭を下げた。
「聖女さま?」
  レジスはアルの姿を見た。妙な白衣と思ったものはよく見れば一回りも大きい神官服を着崩して身につけている事や、その奇妙に尖った髪も柔らかそうな事に。少年と思われた体つきも、まだ成長の最中にある少女のものだった。
「もうしわけありませんフェルティアさま」
  口調も変わっている。
「おい、フェルティア、どういうことだ」
「レジスさま。いらっしゃったんですか。この方は、アル・ナスラインさま。レテの聖女と呼ばれるお方です。姿を消されていたのですが」
  フェルティアはレジスをにらみつけた。
「まさかレジスさま、お金がほしくて聖女さまを」
  レジスは慌てて首を横に振る。
「うわあ、そんなわけないだろ」
「いえ、彼は私の依頼を聞いてくれただけです」
  アルは柔らかな口調でいった。
「彼の果敢な活躍は大きく評価されてしかるべきです」
「本当ですか?」
「ええ」
  アルが真顔で頷くと、フェルティアは少しばかり気になるようでそわそわし始めた。
「それはいいことを聞きました」


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