NO1
砂の城
その1
その2

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2
 アル・ナスラインは城の中を見た。
  出口であるそこはただ大きな割れ目があるように見える。その中から冷たい空気が漏れている。
 アルは城の中に、一歩踏み出した。砂でできているはずなのに、それは堅く、岩の上と何ら変わらない。未知の技術による加工か、魔術か、分からないが、ともかく何らかの術が施されていた。
「わからんな」
  アルはまっすぐ降りていく通路をすすみ始めた。
  通路に入ると光が少しづつ疎らになっていく。地下に入ったようで、やがて光はなくなった。アルは懐から短剣を取り出した。小さく呟くと、ナイフは淡い光を放ち始めた。
「よしいこう」
  アルはさらに奥にと進みだした。
  アルが『砂の城』に来たのは噂を聞いたからだ。
  砂漠に一夜にして城が現れ、その城の中には美しい娘がいて人々を待っているという。宝を人々に渡し、彼女は救出を依頼する。
  もし、彼女が自分の求めるているものとしたら。
  そう考えると我慢しきれなくなり、砂漠に踏み込んだのだ。
  三日あまり砂漠をさ迷い、ガイドを何人も変えて、やっとここにきた。最後にガイドになった青年レジス・シャールは、大きな猫を思わせて不安だったが、見事にここに連れて来てくれた。
  猫には猫の、犬には犬に向いた探し物がある。今日は猫であったようだ。そんな風に思いながらアルは進んだ。
「少女か」
  アルの顔に笑みが忍び込んだ。
「君だといいな。ここにいる美しい娘が。でも、君ならそんな事はしないか」
  呟いたアルの耳に声が聞こえた。
「・・・けて」
  どこかで声がした。
  か細い声は聞き耳をたてればずっと奥の方からきているのは分かる。しかし問題もあった。回廊は終わりだった。
  アルは目を閉じ意識を集中させた。心の中に想像した目を見開く。それはアル個人では知りえない万物を捕らえる神の目だ。
  再びアルが目を開いた時、その目は蒼から黄金色にに変わっていた。
「助けて」
  通路は壁では終わりだったがそこの先にあるものをアルの目は見通すことができた。その結果は。
「外れか」
  アルは小さく声をあげた。目の輝きは蒼に戻る。
  壁の先から声が聞こえた。入る場所がないかとゆっくりと一回りする。だが、どこにも入り口らしきものはない。
「仕方ないな。もうムダなのは分かっているのだが」
  アルは壁に触れた。手を動かし弱そうなところを見つけると短剣を叩きつけた。元が砂ということもあるのかすんなり短剣が入る。そのまま壁を壊し、道を作る。
「入るぞ」
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