NO6
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z 明 |
「お帰り」
アルとフェイトは、レジスの姿に驚いていた。 戻った宿屋ではレジスが待っていた。壁によりかかりどこかうつろな顔のレジスにアルは軽く手をあげて答えた。 「疲れているな」 アルの問いに、フェイトがすまなそうに言葉を続ける。 「ああ、母さんですね」 「いや、違うよ」 レジスはあわてていう。同じ部屋で窓際に腰掛けくつろいでいるニアヴに声をかけた。 「気を使われなくても。長話ですからね」 「でも役に立つことの方が多いのよ。そう、あれはまだフェイトが、うちの子じゃなかった頃の話なんだけど・・・」 フェイトが笑った。 「それでどうだったの?」 「自分が見たところだと、何かが神殿から流れていますね。それが広がり山を汚染し、こちらにも広がってきていますね」 「疫病というよりはある種の呪いのようだ。だから通常の疫病の防ぎ方では無理だな。善後策はいくらしても無駄そうだし、できれば神殿ごと潰してしまいたいが、それをすると逆に拡散するかもしれないから、内部にいって呪いの源の浄化。これが確実だと思う」 「そこに何があるか歴史を調べた方がよさそうだね」 レジスの言葉にアルは頷く。 「ああ。それはそういった場所に出入りでき、尚且、能力も高い人物に依頼したから問題はない」 「へえ。さすがアルちゃん。そんな知り合いもいるんだ」 「何を言ってるんだレジス氏もしっているだろう」 アルは邪笑を浮かべた。 「お待たせしましたアルさま」 扉が開き姿を見せたのはフェルティアだった。手には数冊の本を持っている。 「一度帝都までいったので少し時間がかかってしまいました」 「ありがとう」 レジスは硬直した後、叫んだ。 「どうしているんだよ〜」 「アルさまに頼まれまして。だってレジスさまがいろいろご迷惑をかけてるんです。心苦しいじゃないですか」 レジスは黙ってフェルティアの手を引っ張った。 「何するんですか」 「帰れ」 「まあ、落ち着けレジス氏」 レジスは普段見たことがない厳しい目でアルを見ている。 「アルちゃんが、フェルティアに頼むなら俺はこの仕事下りる」 「いやそれは」 そういうとレジスは飛び出していった。 「レジスさま」 出て行ったレジスの姿を追いかけて、フェルティアは立ち止まった。 「先に説明しますね」 「それは後でも」 「説明しますね。それに手伝うと言い出したのは私なんですから、レジスさまが何をおっしゃられようと関係ありません」 ああ、昨日の苦労が無に帰していく。そう残念に思いながらアルは頷いた。 「ハイ」 アルは頷いた。 「あの神殿にあるのは『昏き理』だそうです」 フェルティアはいった。 「『昏き理』か。フェイト氏、心当たりは?」 「名前だけは知っていますがあそこにあるとは知りませんでしたね」 「どんなものか教えて貰えるかな?」 「魔術師にはいくつか禁断の術が存在していますの。その一つが『昏き理』です」 「それだけでは分からんな。どういう術なのだ?」 フェルティアはフェイトを見た。魔王と世間で呼ばれている魔術師の前での口上はどうかと思ったのだろう。 「自分から説明しますよ。禁断の術はいくつかある『覇空焔舞』、『真王破宇』、『破壊の光輝』、『消滅の暗黒』、『四霊顕現』、『狂熱の骸』とかね。その術そのものは難しいができないというわけではないんです」 フェルティアは頷いた。 「ただし魔術書があったとしても、使った後に影響がある。これらの呪文は強力で神ですら殺す可能性を人に与える変わりに人間の方も無事ではすまない」 アルは目を見開いてフェイトを睨んだ。 「もしその呪文を使った人間はどうなる?」 「胃界に飛ばされたり、体そのものが破壊される。ただ、制御し切れれば使えない事はないですよ。最近だと、アルさんを攻撃してきた魔術師が恐らくは『四霊顕現』をつかっていたと思います」 「禁断の呪文か」 フェイトはアルを見つめた。 「使い方は教えませんよ」 「どうしてわかった? まあ、その昏き理を手に入れてもいいじゃないか」 「アルさま、魔術書に書かれた呪文は力を制御しきれないものが使いますと、呪いごと飛び散りますの。恐らく『昏き理』を誰かが唱えたのでしょう。それで今のような状態に」 「それが分かっているなら。対処もあるのだろ?」 「勿論です。それには『闇払う陽の標』をつかえばいいですから。エリクが持っているし話簡単だ」 「そうなのですが、あの馬鹿、連絡がつかなくなってまして」 「フェルティア嬢が、そんな言い方するの珍しいね」 「エリクとじゃ二回ほど切りあってますしね」 「は?」 「私これでも騎士ですから。友人の所に夜間押し入りましたのでつい怒ってしまいまして」 少しばかり自慢気にフェルティアはいった。 「エリクの居場所なんだけど、それなら心当たりがあります。もともと『闇払う陽の標』があった島で」 「場所だけ分かればいってきますよ。空間転移で」 フェイトはいった。 「わしもいこう」 |
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