NO6
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z 明 |
レジスは腹いっぱいになるまでご馳走を食べあさった。肉料理を中心にした食事はボリュームもあって、うまいものが多く、一年分くらいの肉を食べたような気がする。 アルを探して宴の中をうろうろすると、窓際で壁の花になっているアルに気づいた。ひっそりとした様で宴に騒ぐ人々を見ている様子はどこかさびしい。 「食った食った」 明るい口調でいうとアルはあわせたのか機嫌よく笑った。 「おお、よく食べたみたいだな。それはよかった」 「アルちゃんは?」 「わしはいい」 アルの手にはまだ減っていないワインしか見えない。 アルと同じように壁に寄りかかり、宴の中心になっているロディを見た。 「しかしアルちゃんにしては随分と親しそうだったね」 「そうか? わしは基本的には誰にでも社交的だが」 「聖女っぽい社交と、今みたいな姿があるじゃない。そっちの方で親しげにしているのってあまり見たことないんだけど」 「むう。ロディはわしが最初の冒険に出た仲間なのだ」 「ああ、それで。アルちゃんも最初のパーティがあてんだね」 「本当にありきたりのパーティでな」 アルの声が優しくなる。 「へえ」 「戦士と魔法使い二人と神官と、ガンスリンガーと」 「ありきたりじゃないよそれ」 「そうかな。まあ、街近くの洞窟なんてところは本当に冒険らしい」 「それはまあそうだね」 「魔王やらANKとあったんで驚いたものだ」 レジスの顔色が変わるがアルは気に留めず話し続けた。 「魔王にANK?」 魔王はずば抜けた魔術師の名でもあるが、同時に魔物の王を示す。ANKは古代に滅びた種族である翼持つ魔の一族だ。 「魔王はまあ今はもう消えたし、もう一つはただの有翼人かもしれないが。とにかく古の存在だ」 「それ絶対に最初の冒険じゃない」 「まあ、そういうな。しかし冒険らしい冒険はあれっきりでな。どうしてあんなに仲良くなれたのか今だと不思議な気がする」 アルは黙った。 「ちょっと風を浴びてくる」 レジスにワインを押し付けて、ゆらゆらとアルはテラスに出て行った。 「アルちゃん遅いな」 |
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