NO7
昏き理

その1
その2

 

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 アル・ナスラインはメンツを確認した。
  剣士エリク・チェンバース、商人?レジス・シャール、魔法戦士フェルティア・アルフィスタ、エルフニアヴ・ハークレイブ。
「こんな充実したメンバーでいくの初めてだ」
  アルは呟いた。
「よく今まで無事だったわね」
  ニアヴの言葉にアルは笑顔を向けた。
「無事だった事なんかないが、こうして今行けるのだから悪くはない」 
「ところでどう向かうかなんだけどどういくの。一度、アルちゃんは見てきているんだよ」
「前回はフェイト氏がいたので、さっさと空間跳躍をしたが、今回は人数の手前徒歩でいく。森を抜けて廃坑をこえれば早いのだったなニアヴ嬢」
「ええ。その通りよ。私が昔・・・・」
「さあいこう」
  ニアヴの話が長くなりそうなのでアルはあっさりといった。
  森の中は鬱蒼と茂った木々があったが進めないというほどではない。
  自分でいうだけあってニアヴはその森に詳しく、いい道を選んでは進んだ。時折、間違いもあったが大した問題ではなかった。
「確かにいい道だな」
  アルがそういうとニアヴは笑った。
「そう早くてモンスターも出ないしいい道なの」
「なるほどな」
  レジスが口を開いた。
「あのさ思い違いなら悪いんだけど、この森ってさ獣人族の縄張りじゃないっけ。あと迷いの森とかいって出れないなんて噂もあったけど」
「そんなことはなかったと思うけど、この道を通るのは200年振りだから」
「え、200年」
  その年は少なくとも全員が絶句したものなのはいうまでもない。

「まいったな」
  アル・ナスラインは呟いたがその声には余裕があった。
「多分そういう状況じゃないと思うよ」
「そうですね。レジスさまの言う通りです」
  囲まれたと気づいた時には既に遅く、道の前後にはアンデットの群れが現れていた。死んでいるがゆえに肉体の限界を持たないアンデットは数が多いと、脅威になる。最初に攻撃呪文を使って数を減らしておくのがセオリーだ。
  だが、
「行くぞ」
  エリクは剣を抜いた。『闇払う陽の標』。その名で呼ばれる剣は美しい刃を見せている。アンデットは倒れていた。
「なんで何もしてないのに」
  レジスの言葉にフェルティアも頷く。
「いや、斬っていた」
  実際、アルの目にも見えはしない。ただ、『真実の視界』で分かったに過ぎない。
  アルの能力の高さは傑出しているが、その力の理由は知識量にある。その知識の出所は目にある。アルの目は、「真実の視界」とか「神眼」と呼ばれる目だ。
  現実だけでなくそこに残されている記録も見る。万物を一冊の本のように見てしまうの認識では過去と現在が入り混じっている。
  幸い意識して能力を制限したり、慣れ親しんだ人間(という基準もあいまいなのだが)は読めなくなるが。
  アンデットは仲間を倒された事も怯まず、さらに襲い掛かってくる。
「ニアヴ嬢、弓で前を援護」
「はい」
「フェルティア嬢、後ろに攻撃呪文。前はエリク氏を巻き込むかもしれないから」
「わかりました」
「レジス氏、後ろに回ってフェルティア嬢へ声援」
「任せて、え? それだけ」
「適材適所だからな」
  アルは手を上げた。
「聖鐘より、音響け」
  全員の体が銀の光に包まれる。祝福と言われる強化の呪文だ。
「さて、わしもいこうか」
  アルは短剣を構えた。その短剣の持ち主が思い出された。

 その日、旧街道を進むうちにいくどとなく小競り合いがあった。
  アンデットも、人間のものだけではなく、獣人のものもあり、森そのものが魔境と化しているように思えた。
  野営をすることになった。焚き火を中心に、保存食の果物をかじりながら、地図を広げて、アルは今後の進路を考えていた。
「これではいつまでもつかない」
  そう戦闘に費やされる時間の問題だ。被害が少なくとも時間がとられる。これでは速やかに移動する事はできない。
  ニアヴが地図の一点を指差した。
「もう一つ心あたりがあるわ。でもそこは坑道の中だから、私たちエルフよりは、むしろドワーフの一族がこのむところなの。知っての通り、エルフとドワーフというのは、あまり仲が良くない上に、今のように支配者の一族を選んだことをとても悪く思っている」
「分かった。そうした交渉ごとはどうにかするから、内容を教えて欲しい。あとその情報が二世紀以上立っているのかどうかも聞かせて欲しいな」
「最後にいったのは10年ほど前ね。その時点でほとんど廃坑になっていたわ」
「それはここに出るんだろ」
  エリクが地図の一角を指差した。それは目的である聖域の山の側だった。
「知っているのかエリク氏は」
「ああ。そこは、確か前帝国で、ドワーフと折衝している」
「ではちょうどいい。エリク氏とわしでいって通してもらえるか確認しよう」
「今の話聞いてなかったのか。前っていったろ。エルフもドワーフも人間より寿命が長いからな。しばらく放っておくことになっている。俺が一緒にいったからどうなるものでもない」
「それはいってからダメなら考えればいいことだ」
「そういいだすときかないから、素直にいってきたほうがいいよエリク」
  レジスは苦笑いを浮かべている。




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