それいけ
ノノ先生

3.教え子たち

 

 「おも〜い〜」
  ノノは廊下を飛んでいた。
意外と重いのが出席簿である。先生として初めてということで、勉強も兼ねて副担任になったが、いつまでも担任の姿がない。
  そこで職員室から名簿を持って、出席をとることになったのだが。
「大丈夫ですかノノ先生」
  そう声をかけられた方を見ると白髪頭の老人が立っている。皺に埋もれているような年齢だが声には張りがあって背筋もまっすぐだ。小脇にはノノを重さで潰せそうな厚い辞書を持っている。
「教授おはようございます」
  生徒が声をかけて通り過ぎて行く。
「よかったらお持ちしますよ」
  老人は手を差し出した。
「ありがとうございます」
  ノノは頭を下げた。
「これでは先生には使い辛いでしょう。生徒には、各人のルールをできるだけ優先するといってますが、教師にまでは手が回らないようですしな」
「そんなことを」
「ええ。ここは多くの世界から来た生徒たちがいますからね。ほんの些細な事でも、実は命を賭けるような事かもしれない」
「どこを先にするかの問題ですね」
「ええ」
  歩いている内に見えてきたのはM組だった。
  ノノは過日渡されたメモを思い出し、ため息をついた。
「どうされました」
「いろいろな生徒がいるみたいですね。なんかやたら喧嘩ぱやいのから、すごい天才まで。もうあたしどうしたらいいのか」
「案ずるよりうむがやすしですよ。今年とった先生はどの方も力のある方だと聞いています。ノノ先生もそうなのですよ」
「ありがとうございます」
  ノノは扉を開けた。
  落ち着いてみれば一見まともそうな面々だ。
  中にはルーテや封希といった知り合いの顔も見える。これならどうにかなるように思えた。一緒に入ってきた老人は教卓に出席簿を置いた。そのまま生徒達の合間に混じっていく。
「ノノちゃ先生に、教授おはようございます」
  封希が
「え?」
「教授、遅いですわ。今日は詩経の読み説きをしてくれるんではなかったですの?」
  品の良さそうな黄金の瞳をした少女が老人にそう話しかける。
「清原さんすまないね。いやいや、そこで先生とお会いしましてな、少し話ながらきたものだから」
  ノノは大きな声を上げた。
「教授じゃないんですか」
「徒名ですい。いやはやお恥ずかしい。まあ、確かに前まではそんな時期もあったのですが」

 

有馬暁生
  既に博士号を持ちながら、今回の学校運営に興味を持って参加
  あだ名は教授。ひ孫がいる。



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