それいけ
ノノ先生

1.誕生ノノ先生

 

 

 公園には人影はまばらだったが、人影でない影が大小2つ。二つとも翼を見せている。
 妖精と天使だった。
「来月から学校にいくですよ」
「ああ。あのみんながいっているところね。あまりおもしろそうじゃないけど」
  ルーテの言葉にノノは答えた。
 昼下がりの公園。誰の姿もなく、二人は公園のベンチに腰掛けていた。
  2月ということあって肌寒いが風がないせいで陽だまりにいればそれなりに暖かい。
「そうなのですよ。人間には学歴が必要なのです」
  学歴。基本的に剣と魔法の世界出身者としてはよくわからない事だ。実際できるかわからないのに、そこにいってだけで評価するのは妙な事だ。それに、
「まずルーテは人間じゃないと思うけど」
「それはそうなんですけどアルさんに言われたです」
  アル・ナスラインはこの世界で職業を得て、随分適応しているみたいだから、自分やルーテのようにふらふらしているのがよくないように見えるのかもしれない。
「アルか。まあ、アルならこなしそうな気がするけど、そんなに必要なのかな?」
「でもお金もいるですしね。あまりみんなにごちそうしてもらうのも悪いですよ」
  確かにこの世界で顔を会わすメンツのうち、職らしい職がないのは、ルーテと自分だけだ。
「それに授業の中に実習があって、給料も出るらしいです。それに学校で給食なるものもあるとか。楽しみですよ」
  給料。なかなか定まった収入のないノノには魅力的だった。それに給食。ルーテの平和そうな顔を見るときっとおいしいのだろう。
「あたしも受けよう」
「それはいいです。まだ、学校で募集してたですよ」
「そっか、じゃあ行こうルーテ」

「なんかルーテが書いたのと違うですね。こんな技能なんてところなかったですよ」
  もらってきた書類をノノはルーテに書いてもらっていた。サイズ的な制約からなかなか書くのは大変なのだ。
「まあ時期で変わるんじゃない。それよりちゃんと書いてこの大きさだと字を書くのも大変なんだから」
「分かったです」
  ルーテは敬礼をするとボールペンを手に取った。
「名前はノノ・トゥーレでいいですか?」
「それでいいや。ノノ以外は適当で」
「わかったです。あの希望した理由はなんですか」
「ここしかないと思ったのよ」
「おお、なるほど。えっと特技は」
「魔法。軽めのやつね」
「わかりました。あとは、年齢とかですけど」
  ルーテは困った顔をしている。
「なにどうしたの?」
「年齢はその他でいいですか。三文字までしかかけないようになっているので」
「ルーテ!!」
「ごめんです」
「ああ、じゃあ青春とかどうかな」
「確かに二文字でおさまるです」
「ルーテはどう書いたの?」
「アルさんがいうには適齢期って書いておけって」
「それでいいや」
「わかったです」


  ガラス越しの日だまりは冷たい風が入ってこないせいで眠り込んでしまう。
「ノノ、手紙きてますよ」
 うとうとと眠りかけていたノノはそんな声に起き上がった。
 家の中はいつでも適温にたもたれているせいで、ついうとうとしてしまう。
 声をかけてきたのは前の世界からの主人でありリアだった。この世界にきてからは好きにしていいというので、あまり一緒に行動はしていないが、それでも長い間の事だからすばやく反応してしまう。
「すいませんリアさま」
「寝ているところをごめんね。でも、何か厚いものだったから急ぎのように思えて」
「どうですかね」
  ノノは受け取った手紙を開いた。最初に目にはいったのは合格の二文字だった。
「やりましたよノノさま」
  とはいっても試験らしい試験はなかったからだめだと思っていたのだが。
  ノノは主人に手紙を差し出した。
「おめでとうノノ」
  リアはとてもうれしそうに笑顔を浮かべた。
「うわあ制服用意しなきゃ。お願いしていいですかリアさま」
「いいけどノノは制服いらないと思うわ」
「どうしてです?」
「だって」
  リアはリアが開いた紙を見た。

  ノノ・トゥーレ 合格

  上記のものを職員として雇用する。

「先生は私服でいいのよ」
「あれ」
  ノノはつぶやいた。


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