盆踊りの怪異

東葛3


  暑い日々が続いていますが、みなさんいかがおすごしでしょう。
  夏のイベントの一つと言えば、盆踊りですね。今でこそ観光資源に使われ、知らない人が踊っているのを見ることがありますが、昔はその地域の人たちだけが参加する行事でした。地域の若者の出会いの場であったのでよそ者の来訪はあまり好まれなかったのです。


  そのためか松戸の本福寺にはこんな話が伝わっています。
  盆踊りが行われていました。若者たちが、自分をアピールする夜です。その輪の中に一人の大男が入ってきました。娘たちの目は大男に集まっていきます。そう大男の踊りはこの世のものとは思えないすばらしいものだったのです。気が収まらないのは男たちです。妬いた若者の一人が怒りにまかせて刀で切りかかかりました。大男は悲鳴を上げてその場で消えてしまいました。 翌朝、寺内の石地蔵の胸に、刀の傷跡があるのを知った若者は驚き、地にひれ伏してあやまったということです。

  さて、お盆は盂蘭盆会という仏教の行事が元になっています。盂蘭盆会は、サンスクリット語のウランバナの音写であり、もともとはさかさまに吊り下げられた、非常に辛い状況を指します。それが何を指すかといえば、六道でいう餓鬼道や地獄に当たります。ここにいる亡者の苦しみを少しでも楽にするための行事がお盆の始まりなのです。さて、お盆は年一回なので、それ以外の時期、地獄や餓鬼道で苦しんでいる亡者を救うとされているのが、地蔵菩薩です。賽の河原で幼子を救うのは知られていますね。しかし、地蔵菩薩の救う範囲は六道全てなので、そこには人界も含まれています。本福寺にきたのも何か理由があったのか知れません。