上座さんありがとうございます

ネコマタ

バケネコ

SS 慕情

「ごめんね」                             
  達也は首を横に振って気弱な笑みを浮かべている。
「いいよ」
  衰弱が始まったのは式を上げた翌日の事だった。
  新しい生活。新しい日々。新しい人生。葉子の夢見たもの。それが叶った時に喪うなんてなんていうこと。でも、それも当然かもしれない。葉子の夢はここまでだから。
  入院を勧める医師を撥ね付け、わたしは達也の部屋に戻ってきていた。
「ミケの事覚えてる?」
「ああ」
「葉子が事故にあってから暫らくしたらいなくなってしまったね」
「葉子はあなたと結婚したかった」
「俺もだよ葉子。それにお前は葉子だよ」
  笑った私を見てきっと病気のせいでおかしくなってると思ってるんだろうな。
  でももう私の寿命はきている。
  私は生かしていた葉子の夢は叶ってしまった。これから先の生活は彼女はきっと考えていなかったのだろう。本当に夢見がちだった葉子らしい。
「早く元気になれよ。もう敷金も礼金も払ったんだから」
「窓開けてくれる」
「分かった」
  達也は窓を開けてくれた。心地よい5月の風。
「のどかわいた」
「何が飲みたい?」
「ネクター買ってきて」
「そんなの家にないだろ」
「買ってきて」
  子供に向けるみたいな笑顔を見せて達也は部屋を出ていった。
  私は立ち上がった。いなくなったわたしに達也がどう思うのか少し悲しかったけど、 もう時間がないんだ。
  葉子がいなくなってから久しぶりに戻った本当の姿。
  猫は十年生きると人に化けるのを覚える。だから死んでしまった葉子の夢を かなえてあげたかった。
  でも、人の姿のままずっといるのはもう無理だった。
  きっとあなたには分かってもらえない。 いや、ネコが飼い主の夢をかなえるために化けたといって信じてもらえる?
  窓から見ると自転車をこいでネクターを買いに行くのが見える。調子の外れた鼻歌。
  さよなら。葉子と同じくらい私もあなたが好きだったよ。
  言葉にならずにただニャーという声が出ただけだった。
  私は死に場所を求めて離れた。

バケネコとネコマタ〜余談〜
  ネコは長く生きると尾が二つに分かれ、二本足で歩くネコマタになるといい ます。その兆候として自分で火をつけたり、行灯の油を舐めたり、踊り始めま す。で、言葉を喋るようになります。死者を踊らすようになり、最終的には化 けるようになります。老いた母親がネコに食われ変っていた話はこのタイプで すね。
  ただ、こうした段階を踏まずに一気に妖怪となる事もあります。それは人の 思いを受けた猫です。恨みを受けると鍋島の猫騒動を代表とする化け猫の話の ようになりますが、愛情を受けると死んだ母親に代わって子守りをするネコの 話も伝わっています。
  ちょっと目線を変えて西洋の方を見ますと魔女のサバトのお供にはネコは欠 かせません。魔女がネコに化けたり、悪魔がネコに化けて出るときもあります。 そんな悪魔がネコに化けたものはグルマルキンと呼ばれ、日本と同じく尾が二 つに分かれています。
  もっとも『ネコマタ』だといっても主人であった老婆を食い殺してしまう金花猫 や、『バケネコ』でありながら主人の忘れ形見を母親の姿になって世話をする話もあ りますから、一概にどちらともいえないのですが。

ネコヤマ
バケネコやネコマタ。彼らはいつの間にか人家から消えてしまいます。それは化けたのか消えたのか、その行く先はネコヤマと呼ばれています。山中にあると言われるそこは温泉があり、ネコがのんびり過ごしているといいます。そこに人間が迷いこんだ時、悲劇が起こります。
  道に迷った旅人の一団が、山中で一件の家を見つけます。旅人の一人である若い男が、その家のこいさん(おじょうさん)がちらちらとこちらを見るので気にしていると、自分がかつて旅人のところの家で飼い猫だったのを語ります。信じない旅人にこいさんは、では決して温泉の湯に入らないように告げます。男が部屋に戻りますと誰もいません。すると女中が男を風呂に呼びに参ります。いってみるとみんな気持ちよさそうに風呂に入っており、ああかつがれたと思って一人を見ると毛が全身に生えております。気付けばみんな猫に転じています。
  男は慌てて逃げ出します。飼い猫であったこいさんに助けられ、どうにか逃げ出すと後ろからネコマタたちが桶と柄杓を持って追いかけてきます。川に飛び込み九死に一生を得た男ですが、逃げた時に背中にお湯がかかったのでしょう。背中の一角に猫の毛が生え、それは死ぬまで消えなかったといいます。
  そんなネコヤマの猫は古くなると神様の使い姫になるといいます。でもその本性は消えておらず、大正時代までは、子供を襲って食べたという話が残っております。


忌むべき夜 猫の王様

 今日はワルブルギスの夜です。ドイツでいうところの魔女の夜なのです。ドイツのブロッケン山に魔女が集まって集会をする。ブロッケン山といえば、ブロッケン現象で(光が背後からさしこみ、影の側にある雲粒や霧粒によって光が散乱され、巨大な影を作る)おなじみの山です。二本でいう恐山とかそういう感じでいたんですが、実際はなだらかな山で電車や、マウンテンバイクで頂上までいけるそうです。

 さて、そんな魔女の夜。出歩いているあなた、暗がりの中、道に迷ってしまいます。歩けど、歩けど一本道。前の方から聞こえてくるのは鳴き声。悲しげにすすり泣く声は聞いていると胸が張り裂けそうになります。しかしながら、道は一本。葬列の横を抜けなくてはなりません。
 意を決してあなたは歩き出します。しかし、不思議と葬列は小さいままです。思ったより遠いのかと思うと側まで来ました。いいえ、葬列に並ぶもの達が小さいのにあなたは気づきます。
「王さまが亡くなられた」
「なんてことだ」
「いったいどうして」
 小さな人々の嘆きをはき出す口には髭がまっすぐ生えています。あ、猫だ。そうあなたは気づきます。
 しかし、騒ぐことなくあなたは静かに静かに葬列の横を抜け歩いて行きます。
 どれだけ歩いたでしょう。あなたは見慣れた道を歩いています。
 振り返ってもそこにはあの葬列の姿はありません。
 家に帰ったあなたは、その事を家人に話します。
「昨日猫の王さまの葬列にあったよ」
 途端にあなたの家の猫は起き上がります。
「次の王さまは僕だ」
 そしてあなたはその猫に逢う事はありませんでした。

 猫の妖精、ケット・シーにまつわる話です。彼らはどうも王がいるらしいのです。その交代はこのように人間の口からの伝聞となります。今回はこのように亡くなられたからこそですが、不祥もなく、王権が移行するのは、今日なのです。
 家人が不意に帰ってきて、猫の話を始めたら、ちょっと黙らせましょう。もしかしたら、あなたの家の猫ちゃんが王様として招聘されたのかもしれませんから。


猫神様のお通り

910 :本当にあった怖い名無し:2011/04/04(月) 11:13:19.20 ID:T7oGmmbo0

震災での被害はほとんどなかったものの、津波で水をかぶった地域。

地震発生後、町内で一番高いところにある神社に避難していく途中、
見慣れない女の子が、前から町内をうろついていた猫を数匹抱えて走るのを
複数の人が目撃している。

小学校低学年くらいの女の子で、黒か紺のジャージの上下着用。
ほとんどの目撃者は走って追い越されたそうだ。



当時は不思議に思わなかったが、死に物狂いで走る壮年の男性などを、
腕いっぱいに動物を抱えた小学校低学年の女の子が追い抜けるものだろうか?
しかも、うちの町内は南と西が海に面しており、北は山で、
東は車で30分ほど行くと隣町というどんづまりの田舎町なもので、
基本的に「知らない子供」がいることがまずない。

町内で直接の死人は出なかったが、海に近い通りなどは軒並み半壊。
しかし、浜の近くに住んでいた野良猫の多くは無事だった模様。

あの女の子は神社の神様かな?
それともその手前にまつってあるお地蔵さんかな?
と、地元で今一番ホットな話題として語られている。



911 :本当にあった怖い名無し:2011/04/04(月) 12:33:18.32 ID:EkX2ZJAgO

女の子に姿を変えた神の遣いだね。未曾有の災害時は
どさくさに紛れて、妖怪やら、神の遣いやらがすぐそ
ばまで降りてきそうだな。


 これは今年になって2chに張られていた話です。
 極限状態にある人間が、その状態から脱出するのに導いてくれる何かに遭遇する。それは人であったり、声であったり、また気配だけだったりする。先導され励まされたのに実在を示すのは記憶のみ。そういう現象をサードマン現象という。
 今回も目撃した人のうち話した人が多いのではなく、見た人が助かった人と考えると、その一種なのかと思った。

 好きな話だと絵描きの氷泉さんに話して、絵が見たいなとだだをこねたら描いてくださった。

 
猫僮女
http://www10.plala.or.jp/cotton-candy/momomi2/maki-2549.htm

 この猫の娘以外にも素敵な絵がたくさんあるので、見るのが吉。
クロヌシカガミ http://www10.plala.or.jp/cotton-candy/

うちのTOPに使わせていただいている眠り白澤も氷泉さんの作品です。