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ティアマト















SS 太母神の系譜
  マルドゥークは眼前の敵を見た。
  敵の軍勢は強大だ。
  母なるティアマトに生み出された多くの怪物たちは、神々に比肩する力を持つものもいるだろう。
  マルドゥーク、神々の祖もまた彼女なのだからそれも当然なのかもしれない。
  彼女は世界でもっとも古い女神だ。
  速やかに勝負をつけねばならない。
  頑強な マルドゥークはティアマトの毒にも耐えれるが、他のものは耐えられない。速やかに終わらせねば死ぬのは神であり、自分だ。
 それはティアマトも分かっているようで、あちらから仕掛けてくることはない。
「俺が出る」
  マルドゥークは軍勢を率いることなく単騎でティアマト軍の前に立った。
  大軍勢の前にただ一人立ったマルドゥークに声がかかる。咆哮や怒号。
  それは数多の怪物たちのものだ。
  だが、怪物などものの数ではなかった。
  空を覆わんばかりの巨大な顔と圧力が、マルドゥークにかかった。体が崩れそうになる。
  いや、それは錯覚だ。
「エアの子倅がなんのつもりだえ」
  ティアマトの声を聞きながらマルドゥークは叫んだ。
「お前のわがままのせいで神々は互いに争っているのだ。はずかしいとは思わんのか?。俺は一人だ。それにこんな軍勢とは大した勇気だな。もし来れるのならかかってこい。もっともお前にその勇気があればな」

塩辛い水〜由来〜
  バビロニアの神話では世界が渾沌としていた時、淡水の神アプスーと、塩水の神ティアマトー、霧の小人ムンムのみが存在していたといいます。
  アプスーとティアマトーの交わりから多くの神々が生まれました。神々は活動的でアプスーとティアマトーをからかいました。アプスーは耐え切れなくなり神々を殺そうとしましたが、ティアマトーは自らの子ということもあり殺すのを止めます。結局アプスーは耐え切れずに殺そうとしますが、逆に主神エアに殺されて大地となってしまったのです。それでもティアマトーは耐えました。
  やがてエアにマルドゥークという子供が生まれます。彼は今までの神に輪をかけた
乱暴もので、他の神々の嘆きを聞いたティアマトーはマルドゥークを殺そうとします。
  しかし、それはマルドゥークの、広い意味では新しい主神であるエアの策謀だったのです。
  マルドゥークはティアマトを挑発し、ついには彼女をおびき出し殺してしまいます。そしてそのままに彼女は世界の材料にされてしまうのです。
中国と北欧〜余談〜
  ティアマトーは殺され天になりました。こうした巨大なものを殺し、世界にするというパターンはバビロニアだけでなく北欧神話や、中國の盤古神話でも見る事ができます。これはもともと彼女が自然神だった事を示しています。
  そして怪物を生み出す性質。それは豊穣の証であり、母神であった頃の性質を留めています。こうした怪物を生み出すという話を聞いて思い出した方はいらっしゃるかもしれません。それはギリシア世界で多くの怪物を生み出したエキドナです。彼女もまた零落した母神ですから、もともとは神格だったのかもしれません。
  では、零落していない母神はあるのかというと、それが中國の女?
(じょか:女に渦のさんずいぬきです)です。ジョカは夫である兄弟でもある伏羲と共に世界を作り出し、後に治世者として三皇の一人に数えられました。もともと苗族が自分の祖を竜としていたのが漢民族に吸収され竜を祖霊とする事になったのです。その思想は最後の王朝である清にまで残り、竜は皇帝の象徴という名誉を長い間持ちつづけたのです。ちなみにそのような半人半蛇の神竜の絵は古墳にも残っております。